コンチェルトⅡ ~沙織の章
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智之達と 過ごす時間が 増えるほど
紀之と沙織は 智之が サラリーマンでいることが 気になってきた。
沙織は 智之達の住まいも 申し訳ないと思っていた。
自分は お母様と一緒に住んで 色々 助けてもらっていたから。
「智之さんに 会社を手伝ってもらうように お願いしたら。」
沙織が言うと、
「そう思っては いるんだけど。タイミングがねえ。」
紀之の言葉に 沙織は頷く。
「智之さん達 この近くに 引っ越せればいいのにね。」
沙織が言うと 紀之は 驚いた顔で 沙織を見た。
「そうか。この近くに 土地を探して 智之達を呼ぼう。そのタイミングで 会社の話しをすればいいね。」
と紀之は 明るく答えた。
「智之達のことなんだけど。この近くに 一戸建てを 建ててあげられないかな。」
紀之は お父様とお母様に話す。
「沙織ちゃん それでいいの?」
お母様は 驚いた顔で 沙織を見る。
「もちろんです。私達ばかり お母様に 助けて頂いていて。麻有ちゃん 一人で 子育てしていて 大変だと思う。それに 近くに住んだら 子供達も 楽しいと思います。」
沙織の言葉を お父様とお母様は 温かい目で聞いてくれた。
「真剣に探そうよ。みんなが 近くに住んでいた方が 何かあっても 心強いじゃない。」
紀之が言うと お父様は 優しい笑顔で頷いてくれた。
「沙織ちゃんが 優しいから 紀之も智之も 幸せだね。」
とお父様が言う。
「それ おかしいだろう。優しいのは 俺だろう。」
紀之の言葉に みんなが 明るく笑う。
沙織の心は 熱い感動で 包まれていた。
多分 お父様も 智之達の家のことは 気にしていたと思う。
でも 沙織に遠慮して 言い出さなかった。
大きな買い物になるから。
たとえ お父様のお金で 買うとしても。
そんなご両親だから 沙織は 智之達にも 同じような生活を してほしいと思う。
できれば お父様の会社で 紀之と一緒に 経営を手伝ってほしいと。