コンチェルトⅡ ~沙織の章
沙織は 自分の父親が 苦手だった。
小さな頃から 沙織は 父と遊んだ記憶がない。
紀之と子供達のように 父の膝に 抱かれたことも 手を繋いで 出かけたことも。
父は 子供達を 近付けなかったから。
父は 家では いつも一人で 和室にいた。
食事も 一人でしていた。
何故 父は 家族と 過ごさなかったのだろう。
子供の側に 居たいと 思わなかったのだろうか。
自分の子供なのに。
自分が 親になって 子供達と接する 紀之を見て 沙織は思う。
父も 紀之のように 子供達と 接したかったのではないか。
でも 接し方が わからなかった。
自分を 子供の目線に 下げることができなかった。