コンチェルトⅡ ~沙織の章

週末 お父様とお母様は 中谷さんを訪ねた。


家を見たお父様は 一目で 気に入って 

その場で 購入の意志を 伝えてきた。
 

「10月中に 引っ越すらしいんだ。その後で 業者に入ってもらって 契約するような段取りで 進めようと思う。」

中谷さんのご主人も こんなに早く 買い手が見つかって 安心していたらしい。
 

「お父さん。智之達に 見てもらわなくていいの?」

紀之は 心配そうに聞く。
 

「契約の前には 見せるよ。大丈夫。智之達も 絶対に 気に入るから。」

お父様は 自信たっぷりに 答えた。

お母様は クスッと笑い
 

「もし 智之達が 嫌だって言っても お父さん 買うって言うの。その時は 翔に 残してもいいから。」

お母様の言葉に 沙織は驚いて お父様の顔を見る。


「松濤で あんなに 良い条件の物件 中々 売りに出ないからね。智之達が 嫌って言ったら しばらくは 賃貸してもいいし。」

お父様が 翔のことまで 考えていたことに 沙織は とても驚いた。
 

「智之達呼んで 食事に行こうよ。」

明るく言う紀之。
 

「紀之さん 家のことは 言ったら駄目よ。」

沙織が言うと お父様とお母様も 笑顔で頷いた。
 

「わかっているよ。あいつら 今、受験のことで 頭がいっぱいだから。言わないよ。」

と紀之も笑う。


本当に素敵な家族。



沙織は 自分の顔が どんどん 優しくなっていくことに 気付いていた。
 
 









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