コンチェルトⅡ ~沙織の章

「俺も ホッとしたよ。結果を聞くまでは ドキドキだったから。」

という智之に、
 

「本当よね。自分の試験より ずっと ドキドキするでしょう。」

沙織は 去年を 思い出して言う。
 

「紀之達は 中学で受験したから。俺達は もっとドキドキしたよな。」

お父様は お母様の顔を見る。


「そうよ。絵里ちゃん達より 物がわかるから。落ちた時 何て慰めようかって ずっと考えていたわ。」

お母様は 懐かしそうに言う。


微笑み合う 紀之と智之の目に 柔らかい 感謝の色が 浮かんだことを 沙織は感じた。
 

「でも 俺達は 絵里加達より 勉強したよ。おかげで 麻有ちゃんとも 会えなくなるしさ。」

智之は 紀之と麻有子の顔を 交互に見る。
 

「はい、はい。すみませんね。」

とお父様が言って みんなで 爆笑する。
 









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