コンチェルトⅡ ~沙織の章
「ところで 智之達。松濤に 引っ越してこないか。すぐ近くに 売りに出ている物件があるんだ。」
お父様の言葉に 智之と麻有子は 驚いて顔を見合わせる。
「簡単に言うね。俺に 買える値段じゃないでしょう。」
智之の言葉に 沙織は 驚いた。
智之達は お父様に 買ってもらうことを 当然と思っていない。
そんな智之達だから 信頼できると 沙織は思っていた。
「俺が買うんだよ。後で 相続すればいいだろう。」
お父様が言うと 麻有子は さらに驚いた顔をする。
「麻有ちゃん、どう?」
智之が 麻有子に問いかける。
「夢みたいです。ありがた過ぎて…」
と麻有子は答えて みんなが 笑ってしまう。
「ちょっと 見に行ってみようか。見て 気に入らなければ 断っていいんだからね。」
お父様の言葉に みんなが頷く。
子供達も一緒に 大勢で 家を見に行く。
沙織は 家族みんなで 賑やかに 移動することが大好きだった。
子供達、お父様達、お母様と麻有子。
晩秋の 陽が暮れはじめる空。
みんなの 笑顔が輝いていて 沙織の心を 温かく満たしていく。
この家族と 出会えたことが 幸せのすべてだと 沙織は思っていた。
これから先も ずっと この家族と 一緒にいたい。
「車、気をつけてね。」
子供達に 声を掛けながら 沙織の胸は 熱い感動で いっぱいだった。