コンチェルトⅡ ～沙織の章

翌日　沙織は　実家の母に　電話を掛けた。

ハワイ旅行のことを　話すと　
　

「せっかくだけど　うちは　行けないわ。お正月は　祐介達が来るし。さおちゃん、お母さんには　丁寧に　お断りしておいてね。」

沙織の予想通り　母は　旅行を断った。
　

「そうよね。お父さんが　一緒に行ったら　お母さん　ゆっくりしないものね。」

母の返事に　ホッとして　沙織は言う。
　

「あれでも　お父さん、大分　丸くなったのよ。」

母は　クスッと笑う。

沙織の心を　母は　見抜いていた。
　

「えー　そうかしら。でもお母さん　一日中　一緒にいるんだもの。少しは　丸くなってもらわないとね。」

定年後の父は　家庭菜園を　楽しみながら　ほとんど　家で過ごしていた。
　

「ああ見えて　お父さん　さおちゃん達が来るの　楽しみにしているのよ。」

母は　フフっと　笑いながら言った。


「私達が行っても　ろくに　顔も　出さないくせに。」

沙織が　少し　むきになって言うと　
　

「お父さんも　さおちゃんも　意地っ張りだから。」

と母は笑う。
　
「一緒にしないでよ。」

沙織は　ムッとして　答えた。
　

「お父さん　さおちゃんを見て　安心しているのよ。そちらのご両親に　可愛がって　もらっているし。紀之さん　優しいから。」


沙織は　父の気持ちを　初めて聞いた。
　

「何よ、今更。結婚するって　言った時は　反対したくせに。」

沙織が言うと、
　
「本当に　さおちゃんも　意地っ張りね。」

と母は笑う。