コンチェルトⅡ ~沙織の章
「お母様もお姉様も 男の子二人だから。男の子って たくさん 食べるでしょう。」
麻有子は お母様と沙織を 交互に見て聞く。
「最近 樹は 良く食べるわ。翔は まだ ムラがあるけど。」
沙織が 答えると
「これからよ。中学生の頃は 本当に 良く食べたわ。紀之も智之も。もう質より量よ。」
お母様は 少し 懐かしそうに笑う。
「私、実家の母は 父と一緒に 仕事していたでしょう。あまり 細々したこと してもらえなかったの。だから 自分の子供には あれもしたい、これもしたいって。色々 夢があって。」
麻有子は 照れたように言う。
「それを ちゃんとするんだから。やっぱり 麻有ちゃんは 偉いわ。」
沙織は 感心して言う。
「こんなに 恵まれているんだもの。家のことくらい 何でもないわ。」
麻有子は 嬉しそうに笑った。
麻有子の笑顔は 感謝と 思いやりが 溢れていて
沙織を とても 幸せな気持ちに してくれる。
麻有子は 三人で お茶を飲んでいる間も まめに動いている。
話しながら 食器を磨いたり 食事の下拵えをしたり。
そのまま 三人の昼食を 用意しようとする麻有子に
「お昼くらい 外で食べましょう。麻有ちゃん 放っておくと 家を出ないから。」
とお母様が笑う。
「だって。こんな 素敵な家なんだもの。それに お母様達がいてくれるから。」
麻有子は 照れた笑顔で言って お母様と沙織は笑う。
こんな風に 三人で過ごす時間が 沙織は 大好きだった。
一日 麻有子の 顔を見ないと 何となく寂しくて 麻有子を呼んでしまう。
それは 麻有子も同じだった。
沙織が 電話しようと思っていると 麻有子から 連絡が入って 笑ってしまうこともあった。
「私も今 電話しようと 思っていたの。」
と言う沙織に 麻有子は 嬉しそうに笑う。
嫁同士なのに 誰よりも 心を許せて 一緒にいて楽しくて。
こんな素敵な家族だから 近くに住めたことを 本当に良かったと 沙織は思っていた。