コンチェルトⅡ ~沙織の章
「しかし 翔も 思い切ったことを 考えているな。」
子供達が 部屋に引き上げた後で 紀之は言う。
「医師になりたいなんて。どうして そんな事 思ったのかしら。」
沙織も 驚きが消えなかった。
「翔は 観察力が鋭いから。医師に向いているよ。」
お父様は 前向きに言う。
「でも 医師の家じゃないから。なってからも 苦労するでしょう。」
お母様の言葉に 沙織も 大きく頷く。
「それは 翔も 覚悟しているだろう。まあ、医師になれればの 話しだけど。」
紀之は 笑いながら言う。
「そうよね。医学部に入るだけで 大変だもの。」
沙織が 紀之を見ると 紀之は 優しく頷いてくれた。
翔の夢は あまりに 唐突だけど 紀之も沙織も 嬉しかった。
「気が済むまで やらせてあげよう。挫折しても 受止めることはできるから。」
お父様の 温かい言葉が 沙織の胸を 熱くする。