コンチェルトⅡ ~沙織の章
クリスマスが 近づいた頃 絵里加の バレエ公演があった。
小さな頃から バレエを 続けている絵里加。
その年 初めて バレエ団の公演に 出演した。
公演の後 みんなで 食事をする。
絵里加は 公演の化粧が 残っていて いつもより 少し大人っぽい。
「姫 プロの バレリーナになるの?」
樹に聞かれて 絵里加は
「ううん。絵里加 パパみたいな人と 結婚して ママみたいな 奥様になりたいの。」
と可愛い笑顔を 輝かせて言った。
智之と麻有子は 少し照れた顔を 見合わせている。
「それは バレリーナになるより 難しいかもね。」
翔が言うと 絵里加は 不満そうな顔を 翔に向けた。
「カッ君、どうして? 絵里加 モテないから?」
少し拗ねて 翔に問いかける絵里加。
「違うよ。姫のパパみたいな人 滅多にいないから。一生、見つからないかもね。」
翔は 樹と頷き合いながら言う。
「そうかな。それじゃ 絵里加 タッ君パパみたいな人でもいいよ。」
絵里加は いたずらっぽい笑顔で 紀之を見て言った。
「こら。それじゃって なんだよ。タッ君パパは 補欠か。」
紀之の言葉に みんなは 声を上げて笑う。
「絵里加 家族が 大好きだから。パパとママみたいな 家族を作りたいの。」
絵里加の言葉に 沙織の胸は 熱くなる。
絵里加も 家族を愛し 大切に思っている。
そして その気持ちを 素直に話せる家族でいることが 誇らしかった。
多分 みんな 同じ気持ちだった。
お父様達も 智之と麻有子も 温かい笑顔で 絵里加を見ていた。
「パパは 絵里加が お嫁に行くなんて 嫌だなあ。ずっと パパの側に いてほしいよ。」
と智之は言う。
「えー。パパ 絵里加が 売れ残りになっても いいの?」
と口を尖らせる絵里加。
その可愛い顔に みんなが 笑顔になってしまう。
「壮馬は? 将来 水泳で オリンピックを目指すの?」
樹が 壮馬に問いかけると
「ううん。僕 タッ君と一緒に パパの会社で 働くよ。」
壮馬は 当たり前のように言う。
「智くん。姫も壮馬も 夢が 無さ過ぎるでしょう。」
樹は 呆れたように言って またみんなで 笑ってしまう。
「普通の生活が 一番難しいんだよ。だから 姫と壮馬の夢は とっても 大きな夢なんだよ。」
お父様は 温かな笑顔で言い 絵里加と壮馬は 嬉しそうに微笑む。