花よ咲け
「今日から、この2年B組を担当することになった紅葉楓(あかばかえで)だ。明るく元気なクラスにしたいと思っているので皆、よろしく。」

「もみじが真面目なこと言ってるとか面白すぎるんだけど。」
「つーか、明るく元気にって小学生かよ。」

「こら、そこ。先生をつけろ、先生を。それに何度も言っているが俺は“もみじ”じゃなくて“あかば”だ。」
「えー、いいじゃん、もみじのほうが綺麗で。」

なんでそんなに騒がしくできるんだろう。絶対に、この先生のクラスにだけは入りたくなかった。うるさくて、騒がしくて……ついていけない。なのになんで私はこのクラスに入れられたんだろう……。

「よーし、まずは学級委員を決めるぞ。誰かやってくれる奴いるか?」

「やっぱし男は日向だよな。誰にでも平等だし人気者だもんな。」
「そうそう、去年は学食増やしてくれたりイベント行事を盛り上げてくれたしな。」

「今年も俺かよ。お前ら、分かっているだろうな。俺が学級委員になるってことはうるさい奴全員廊下だぞ。」


皆に推薦されている彼の名前は日向葵(ひなたあおい)君。クラス1のムードメーカーで元気な人。ムードメーカーな人って普通は元気だけが取り柄ってことが多いけど彼は頭もよく、そして優しい。名前の通りヒマワリのような人。

「葵がいると男子は決めるのが楽でいいな。だれか女子でやってくれる奴はいるか?」

「やっぱり葵の相手と言ったら……。」
「陽花しかいないよね。」

「え、私!?」

彼女の名前は紫吹陽花(しぶきはるか)さん。スポーツ万能で日向君とは幼馴染らしい。見た目は大人っぽいのに誰にでも気兼ねなく話しかける人で日向君とはお似合いだと思う。



「そうだな……景浦とかはどうだ?」
「景浦って景浦菫のこと?真面目ながり勉ちゃんだよな。」
「こら、そういうことを言うな。」

景浦菫(かげうらすみれ)、それが私の名前。野に咲く菫のように美しく気高く育ってほしいと両親が名前を付けてくれた。でも…私には強く生きることも美しくなることもできなくてただの雑草だと言われてきた。

「葵と紫吹はいつも一緒にいるからな……たまには別れてもいいだろ。」
「別れるって、日向夫婦に失礼だな~。これだから体育バカのもみじはダメなんだよな。」

「お前らな……俺をただの体育バカだと思うなよ。人生は一期一会。いつも一緒にいるやつだけじゃなくていろんなやつと関わりを持てと言っているんだ。」

「ほんと、ジャージじゃなければ決まるのにな~。」
「ったく、お前らは……。で、どうだ、景浦、やってみないか?」


私がどちらを選ぶべきかなんか決まっている。雑草は綺麗な花の隣にいてはいけない。綺麗な花の隣には綺麗な花が咲くべき。


「私は……できません。」

「そうか~……仕方がないか、うちのクラスは葵と紫吹に任せるか……。」


これが正しい答え。私には陰でひっそりと見つめているほうが合う。

「……。」
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