花よ咲け
―紅葉side—

紫吹たちを帰してから宿直室に戻るとほとんどの職員がもう帰り始めていた。


「今日の当直は、紅葉先生と事務の桜井さんだけですが気を付けてくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」



見送り終わると桜井さんが俺のことをじっと見つめていた。


「あの、俺に何か……?」

「紫吹さん。」

「え…?」


「紫吹さんたちと日曜日に植物園に行くそうですね。」
「あ、聞かれてましたか…。保護者としてついて行くんすよ。高校生だけじゃ危ないんで。」


「本当にそれだけですか……?紫吹さんのこと……お好きなんでしょう?」
「ちょ、それ、どこで…!?」

「否定しないんですね。」

「いや、俺は教師っす。生徒と恋愛なんてありえないっすよ。」


「はあ……もっとうまい嘘のつき方を覚えたほうがいいですよ。」

「好きっつうか、放っておけないんすよ。紫吹はしっかり者で誰からも頼られていて優等生としては助かるんすけど、人に甘えるのが苦手というか……つっても、最近までは日向と仲良くしてたんすけどね……色々あって言えないことが増えたみたいで抱えなくていいもの抱えてる感じがするんですよ。」

「つまり、異性としての興味ではなく教師としての心配ということですか……?」
「そうっす。」

「全く…ここまで疎いのも考え物ですね。それが好きということですよ。」


はい……?今、桜井さん何て言ったんだ…?




「紅葉先生、今ご自分がどんな顔されていたかわかりますか?」

「いや、どんなと言われましたも……。」

「たしかに教師としての顔をもされていましたけど、男性の顔をしていましたよ。」




俺ってそんなに分かりやすいのか…?たしかに紫吹のことを好きな気持ちに違いはないが顔に出るほどなのか……?



「まあ、私は止めませんし口外しませんよ。人の恋愛なんてその人次第ですし。」

「あ、あの…。」
「ああ、別に口止め料とかもいりませんので。」



「どうやったら振り向いてもらえるか教えてもらえませんか!?」

「は…?」
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