捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで






私の実家・宮成家は、元をたどれば華族の家柄だそうだ。
明治時代に貿易商を始め、民間企業の仲間入りをした。現在の社長は父、後継には弟の由朗(よしお)が立つことになっている。

私は幼い頃から、自分はいつかお嫁にいくのだと思い、育ってきた。
父の会社は弟が継ぐし、両親も「里花には幸せな花嫁さんになってほしい」という願いを口にしてきた。
女性は家庭に入り、子どもを産み、何不自由なく暮らせばいい。余計なことはせず、夫の隣で笑顔でいることが寛容。
女性の社会進出が進む現代社会においては少々古くさい価値観かもしれない。しかし、私の母も伯母たちも皆そういう生き方をしてきた人たちだった。私は自然と自分もそう生きるのだと思うようになった。

幼稚舎から大学まで私立の女子校に通い、卒業後は父の会社の総務部で働いた。それもすべて私が結婚するまでの間。
もう少し仕事を覚えたいと思っても、周囲からは『里花お嬢さんはそこまでやらなくてもいいんです』とやんわり諭される。これは仕方ないことだと諦めるようにしていた。
それに仕事で出しゃばっては、ひとつ下の弟・由朗の立場を立てられない。彼こそが宮成の後継者なのだから。

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