捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「この前、沙織ちゃんと高尾山に登ったのはどうだった?」
「私、全然体力無くて……情けないけど帰り道はロープウェーを使ったわ」
「でも薬王院も頂上も頑張って行ったじゃない」
「沙織さんが手とつないで引っ張ってくれたから行けたの。体力作りしなきゃ、もっと高い山には登れないね」

由朗が笑う。

「もっと高い山って……。そのうち、世界の山を制覇するとか言いだしそう。姉さん、真面目だから」
「そんなビッグマウス叩けないわ。情けなくて」
「まあまあ、今度ボルダリングもしてみるんでしょ。私も初めてだから、一緒にがんばろ、ね? ……あ、由朗さんも一緒に行く?」
「ついでって感じで誘うなよ。まあ、ふたりで行ってきてよ。俺は感想を聞く係」

端から参加するつもりのない由朗に、私と沙織さんは顔を見合わせた。

「由朗ってこういうところヒヨるのよね」
「この前のバケツパフェチャレンジも、最後は私と里花さんで頑張ったもんねえ」

先日、三人でバケツサイズの超ビッグパフェという触れ込みのパフェを食べてきたのだけれど、由朗は半分にも届かないうちにギブアップしたのだ。

「あれはお腹冷えたね。でも、沙織さんのラストスパートすごかったぁ」
「里花さんも思ったより全然食べるんだから驚いちゃった。奏士社長、里花さんのそういうところ、あまり見てないだろうから、すっごく優越感」

沙織さんはいつも話題に奏士さんのことを出してくれる。離れている私が寂しくないように気遣ってくれているんだと思う。
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