捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
奏士さんは渡米から半年、一度も帰国していない。
連絡はスマホで取り合っているし、週に一度は通話で声を聴いている。だけど、実際に会えないのはちょっと寂しい。

彼についていかないと決めたのは私だ。
好意は伝え合ったけれど、交際の約束はしなかった。
だから彼を縛れないし、我儘も言えない。そんな私の心中を知っているのか、奏士さんは頻繁に連絡をくれ、花や靴などのプレゼントも送ってくれる。
メッセージはいつも優しいし、電波に乗って耳に届く甘い声はいつもとろけるほど愛情に満ちている。

「あ、噂をすれば奏士さんだわ」

私はスマホの振動でメッセージに気づく。向こうは朝のはず。

「えーと、【功輔と朝食です】だって。ほら、ふたりでサンドイッチ食べてる」

由朗と沙織さんに液晶画面を向け、送られてきた写真を見せる。写真はラップサンドをかじる奏士さんと功輔さん。自撮りしたようだ。

「この角度だとふたりとも子どもっぽい顔してるね」

画面を見せながらにこにこしていると、由朗と沙織さんがにまっと笑った。

「里花さん、もう一個メッセージ来てるよ」
「え」

慌てて画面を自分の方に向けると奏士さんからの続きのメッセージ。

【早く、里花と朝ごはんを食べられるようになりたいです。愛してるよ】

私はぶわーっと耳まで熱くなるのを感じた。奏士さんからの愛の言葉を由朗と沙織さんにまで公開してしまった。
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