捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
その日は朝からそわそわし通し、仕事中は集中しようと思うものの、気づけば時計を見てしまっている。
今頃、成田に着いた頃だ。約束は定時後の十八時。遅れないように仕事を片付けなければ。
だけどそんな日に限って、社内処理が押してしまう。誰のせいでもないし、ここで浮ついていられない。会社に迎えに来るという奏士さんの申し出を断り、彼のオフィスで待っていてもらうことにした。仕事は続行。
予定より一時間遅れで退勤し、急いで約束の場所へ向かう。久しぶりにやってきた奏士さんのオフィスビル。宮成商事のある末広町駅からだとメトロで三つ先だ。
ビルの前で待っている大好きな人の姿に、私は込み上げるものを抑えた。
私が名を呼ぶより、駆け寄るより先に彼が私を見つけた。長い脚で近づき、腕を伸ばし、少し強引に私の腰に腕をまわした。ひと目も憚らず、私の身体を抱き寄せた。
「奏士さん……おかえりなさい」
「里花、ただいま。ああ、会いたかった! 里花だ」
私の首筋に顔を埋め、奏士さんが万感こもる声をあげる。
その声が身体に染み入ってきて、それだけで泣きそうになってしまった。駄目だ、泣いたりなんかしたらもったいない。こんなに幸せな瞬間に。
今頃、成田に着いた頃だ。約束は定時後の十八時。遅れないように仕事を片付けなければ。
だけどそんな日に限って、社内処理が押してしまう。誰のせいでもないし、ここで浮ついていられない。会社に迎えに来るという奏士さんの申し出を断り、彼のオフィスで待っていてもらうことにした。仕事は続行。
予定より一時間遅れで退勤し、急いで約束の場所へ向かう。久しぶりにやってきた奏士さんのオフィスビル。宮成商事のある末広町駅からだとメトロで三つ先だ。
ビルの前で待っている大好きな人の姿に、私は込み上げるものを抑えた。
私が名を呼ぶより、駆け寄るより先に彼が私を見つけた。長い脚で近づき、腕を伸ばし、少し強引に私の腰に腕をまわした。ひと目も憚らず、私の身体を抱き寄せた。
「奏士さん……おかえりなさい」
「里花、ただいま。ああ、会いたかった! 里花だ」
私の首筋に顔を埋め、奏士さんが万感こもる声をあげる。
その声が身体に染み入ってきて、それだけで泣きそうになってしまった。駄目だ、泣いたりなんかしたらもったいない。こんなに幸せな瞬間に。