捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「日本食が恋しかったんでしょう」
「そうそう。向こうでも食べられるけど、やっぱ味が違うよ。あと、恋しかったのはコンビニ。向こうは数が少なくて。デリではサンドイッチなんかは買うけど、便利さの度合いは日本のコンビニだな」
「何年も向こうに住んでいてもそう思うものですか」
「住めば都で、慣れるけどね。でも、半年前三ヶ月くらい日本にいたら、やっぱり日本便利だなって思ってしまった」

そんな話をしながら、ふたりで店内に入る。案内された個室で向かい合うと改めて恥ずかしい気持ちになった。

「里花、髪短い」
「写真、送っていたじゃないですか」

背中まであった髪を肩までのミディアムレングスにしただけだ。ずっと黒髪だったのを少しだけ明るくはしたけれど。

「似合うよ。可愛いな」
「奏士さんは、会う度どんどん男らしくなっていきますね。……子どもの頃から知っているのに、男の人ってすごく変わってしまうから」
「二十代の頃、近くにいなかったせいもあるかな。俺も里花が蕾から花開く瞬間は見逃してしまった」

そこまで言って首をかしげてにっと笑う。

「まあ、俺の手であらためて花開いてもらうつもりなんだけど。……結婚式、綺麗だろうな」
「奏士さん……私」
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