捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「ごめんごめん、いくらでも待つって言っておきながら、気が早かった」

正直に言えば嬉しい。私が仕事もプライベートも前向きに行動しているのは、半分な自分のため、もう半分は奏士さんのためだ。奏士さんに似合う女性になりたい。隣に並び立って、恥ずかしくない女性になりたい。
そのために自分の力で前に進みたかったのだ。

奏士さん、私は半年前よりは少しだけ前に進んでいる気がします。だけど、まだあなたに相応しいかわからないの。
相手を見誤って、一度結婚に失敗している。奏士さんを信じているけれど、私自身を信じられていない。
もう少し待ってほしい。それともこんなことを考える私は我儘?

懐石料理は美味しく、奏士さんは馴染みの味に大満足の様子だった。

「観覧車に乗りたいんだ」

そう言ってお台場の観覧車に連れてこられる。奏士さんも言っているけれど、一応これが私たちの初デートなのだと思うと、観覧車という定番のアトラクションに俄然恥ずかしさが湧いてきた。

「初デートで観覧車ってベタだったかな」

奏士さん自身も照れくさそうに言うので、そんな姿が可愛いと思ってしまった。私はぶんぶん首を振って答えた。

「いいえ。観覧車、もう何年も乗っていないので楽しみです」
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