捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
会場はマンダリアンホテルのバンケットルーム。
以前はドレスで郷地物産の副社長夫人参加していたパーティーに、今日はデザインスーツ姿で宮成商事社長の秘書役として参加している。感慨深いものがある。

華やかな会場に集まる招待客の中に、奏士さんの姿を見つけた。
当たり前だ。今日は三栖本社のパーティー。グループ企業の社長である奏士さんも参加していて当然。

しかし、目に飛び込んできたのは、奏士さんの腕にしなやかな腕を巻き付けるマノン・ルーセルの姿だった。
サイドに大きくスリットの入った薔薇色のドレスは、彼女が着るとまったく下品には見えない。セクシーさとエレガントさを感じさせる。
近くにアナ・ミラーの姿もある。今日のパーティーのエスコートを奏士さんが務めているのだろう。
マノンは奏士さんにしなだれかかり、その姿は本物の恋人同士にすら見える。あまりに華やかな男女の姿に、周囲の人々もため息だ。

見てはいけないものを見た。そんな気分になった。
奏士さんの愛情を信じているし、応えたいと思っている。だけど、あれほどお似合いの美しいふたりを見てしまったら、自分自身の存在がしおしおとしぼんでしまった。

私はその日、奏士さんに近寄らないようにした。父に付き従い、一緒に挨拶周りをした。
奏士さんが三栖家のひとりとして壇上にあがるまで、マノンはずっと彼の隣にいた。私はそれを見ているだけ。
多くの人に囲まれていた奏士さんは、私が参加していたことすら気づかなかったかもしれない。



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