捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
7.本当に必要なこと
覚悟を持とうと思った。奏士さんの気持ちに応える覚悟。それなのに、情けなくもパーティーで奏士さんとマノン・ルーセルのツーショットを見たら、心が浮力を失った風船みたいにしぼんでしまった。どうにも浮上できない。
容姿で負けているとか、出自で負けているとか、そんな理由じゃない。
自信に満ちた美しい彼女は、奏士さんのパートナーとしてよく似合った。彼女は奏士さんが好きなのだと沙織さんから聞いている。それは私の目からも明らかで、一挙手一投足に奏士さんへの愛情を感じる。そんな様子を見れば、先日のパーティーにいた人たちは彼女と奏士さんの特別な関係を想像しただろう。私よりよほど相応しいと、誰もが思うはずだ。
「里花」
奏士さんが夜遅くに会いに来てくれたのはパーティーから二日後だった。どうやら、パーティーに同行していた功輔さんが私の姿を発見し、その後奏士さんに伝えたらしい。
「こんな時間にごめん」
私たちは我が家のリビングで向かい合っていた。両親や由朗は気を利かせて、部屋に引き上げた。
時刻は二十四時近い。アナ親子のお相手か仕事かの後に駆けつけてくれたのだ。嬉しいと思いながら、どうしても彼の顔を真っ直ぐに見られない私がいる。