捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
見合いの席で会った郷地京太は、明るい男性だった。爽やかで女性ウケしそうな顔立ちに、話し方は優しい。
父と弟以外の男性に慣れていない私はしどろもどろで、ろくろく喋れもしなかった。つまらない女だと思われたかしら。自分自身に落胆していたらその日中に連絡がきた。

結婚を前提に正式にお付き合いしたい。

嘘でしょう? どうして?
そう思ったのを覚えている。
今にしてみれば、この疑問をもう少し突き詰めて考えればよかったのだ。しかし、おめでたいとすでに結婚式の段取りまで考え初めている両親に水を差すようなことは言えなかった。

私の育った環境的に、結婚は家と家の結びつきという側面が一般家庭より強いように思う。
まだ歴史は浅いけれど興隆期に入っている郷地物産と由緒ある宮成商事が姻戚関係を結ぶのは、両家にとって喜ばしいことだったのだ。

交際期間中、何度か食事に連れて行ってもらった。私は一生懸命会話を試み、慣れないながらも未来の夫に打ち解けようと努力したつもりだ。
京太は私の慣れない様子も「初心で可愛いよ」と優しく接してくれ、積極的に話題を振ってくれた。

思えばこの頃が私と京太の関係の一番いい時期だった。少なくとも私にとっては。
私は京太を好きになろうと思った。この優しい男性の妻になろう。
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