捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「里花と恋人同士になれただけでも嬉しいから、いくらでも待つよ。だけど、今夜はもう少し一緒にいられるんだろう?」

覗き込んでくる目は期待に満ちている。私だって期待してしまう。

「うん、奏士さんの家に寄って帰る」
「よかった。ちゃんと家まで送るから。……あと」

言葉を切って、奏士さんはいたずらっ子みたいな表情で言った。

「ベッドの中ではそうちゃんって呼んでくれよ。盛り上がるから」
「もう! 恥ずかしいこと言わないでください」

私は奏士さんの肩をべしべしと叩き、照れ隠しにうつむいた。
両親も交際を知っているけれど、お泊りはまだしないことにしている。遅くとも必ず帰宅する。

短い時間だけれど、じっくりと愛を交わし、送るという奏士さんを断ってタクシーで帰宅した。
深夜、家中は寝静まっていた。私はひとり幸福を噛みしめ、家族を起こさないように寝室に入るのだった。


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