捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「周囲はそう見ない。里花が離婚した経緯をしらない人たちは、三栖家に対して悪い噂をたてるかもしれないだろう。三栖家もそれはわかっているはずだ。宮成家のために断れないでいるとしたら、向こう様の言葉を額面通りに取るのは早計かもしれないぞ」

私は黙ってしまった。奏士さんのご両親も隆士さんもそんな様子は微塵もなかった。でも、本音の部分で引っかかっているところはあるかもしれない。
離婚歴がある。珍しいことではないけれど、彼のような立場の人に嫁ぐとなると、やはりそこは問題になってしまう。

「まあまあ、もう少し様子を見ましょう。まだお付き合いが始まったばかりなんだし。ほら、朝ごはん」

母が気を利かせて空気を変えてくれる。
私は明るい表情を作り、朝食を運ぶのを手伝った。胸は重たい。



週末は奏士さんとデートの約束をしていた。
待ち合わせはお台場の公園。今日はたくさん歩きまわって、奏士さんの家で夕食を作る予定だ。
ふたりで海沿いの遊歩道を歩いた。肌寒い三月、薄曇りの昼時だ。私はマフラーを巻き直し、空を見上げた。

「来週からまた離れ離れだね」

私のために緊急帰国してくれた奏士さんは、あれから二週間、日本での仕事をこなし、来週から再びアメリカへ向かうのだ。
本人曰く、次に帰国するときが日本に腰を据えるときだそうだ。
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