捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「寂しい?」

奏士さんが尋ねるので私は深く息をついた。

「寂しいに決まってます。恋人同士になれたのに、簡単に会えない距離になっちゃう」
「俺も寂しい。でも、この先ずっと里花といるために、向こうでの仕事を整理してきたい」
「わかってます。待っているから」
「今度は半月で戻るし、功輔も置いていく。困ったら、沙織と功輔を頼ってくれ」
「困るようなことないよ。離婚してから平和だもの」

奏士さんが私の手を取る。優しく組み合わせられた手と手。お互いの温度が心地いい。
抱き合うのは大好き。だけど、こうして手を繋いでいるとまるで未来まで見通せるような強い気持ちが湧いてくる。無敵になったような感覚だ。
奏士さんは私の宝物で、大好きな人。この人と歩んでいくためなら、どんなこともできる。

「あのね、奏士さん」

思い切って先日父と話したことを口にしてみる。

「私が初婚の方が、三栖家的にはよかったよね」

奏士さんが首を巡らせ、私を見下ろした。少し眉があがり、驚いたような顔をしている。

「誰かに何か言われたのか?」
「ええと、父に。宮成家と三栖家の江戸時代から続く関係上、奏士さんのご両親は私のことを反対できないんじゃないかって。そうなら、返って御迷惑をかけてしまうんじゃないかな」

ふうと嘆息が聞こえ、奏士さんが私から手を離す。怒ってしまっただろうか。不安になった私の腰を奏士さんが抱き、身体を引き寄せた。
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