捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「でも、夕食の買い物……」
「あとで一緒に行こう。……というか、夕食どころじゃないかも」
「駄目です。夕食作るって決めてるんだから」

私たちは予定を早めて駅前のカフェでランチを取った。それから、奏士さんの車でマンションに戻った。

「しばらく会えない分、里花で満たしておかなきゃ」

そう言って私の身体中にキスをする彼を止めることができない。

「奏士さん、待って」
「待てない。余裕がなくて悪い」

翻弄されるのが怖くて哀願するけれど聞いてもらえない。

「そ、そうちゃん、お願い」
「可愛い声で呼ばれたから、完全に無理」

キスをされ、指先まで舐め上げられ、たっぷりと甘やかされながら私は彼の腕の中に閉じこめられた。
結局、夕食の買い物も作る時間も与えてもらえず、彼の独占欲のままに抱かれ続けた。私はその幸せに抗えない。身も心も、すっかり彼のものだ。


奏士さんは翌週、渡米していった。恋人になって見送るのは初めてで、私は以前より寂しい気持ちに耐えなければならなかった。

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