捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
奏士さんのいない間、私は以前にも増して仕事に邁進した。彼の妻として恥ずかしくない人間になりたい。総務の仕事は以前より幅広くできることを増やし、由朗のサポートとして父のスケジュール管理なども請け負うことが増えた。

「で、どうしてランニングなの?」

私の横を一緒に走ってくれているのは沙織さん。今日はふたりで終業後に皇居周りをランニングしている。

「沙織さんに付き合ってもらって、登山やボルダリングにチャレンジしたけど、私って思いのほか体力がなくて」

軽いジョグでも走りながら説明すると息が切れる。

「ランニングは心臓と肺を強くしてくれるっていうし、いつでもできるから」
「なるほど。私はいくらでも付き合うよ。最近、体重がオーバー気味だったから助かっちゃう」

沙織さんがフットワークの軽い人で助かる。誘えばたいていのことは一緒にしてくれるので、新しいことに踏み出すハードルを下げられるのだ。
疲労を溜めないように、体力の底上げは重要だ。

あと、これは誰にも言えないけれど、奏士さんがベッドの中で何時間も離してくれないことが多いというのも理由にある。今の体力では、とても彼の愛を受け止めきれない。
かといって、気遣われて甘やかされ、彼に遠慮をさせたくもない。奏士さんとは気持ちの上では対等でいたいもの。
< 150 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop