捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
ランニングを終え、私はそのまま沙織さんのマンションにお邪魔した。今日はここがランニングの拠点だったのだ。
シャワーを借り着替えたら、ふたりで食事に出かけようという話になっている。

「あれ? 着信来てる」

シャワーから出て濡れ髪を拭いていると、スマホに連絡がきていることに気づいた。母からだ。着信とメッセージ。メッセージを開けてぎょっとした。

【由朗が倒れました】
【すぐに来られる?】

病院名は由朗が大学入学前に入院していたところだ。病気の治療をしたところ。まさか、再発? 胸に嫌な想いが過る。

「沙織さん」

シャワーから出てきた沙織さんに事情を話す私は、かなり動揺して見えただろう。話の途中で、沙織さんはさっと顔色を変えた。

「ごめんね、私、行かなきゃ」
「里花さん、私も一緒に行く。車、出せるから!」

沙織さんは請け負い、その場で功輔さんに電話をかけた。




病院には両親が到着していた。私は沙織さんと功輔さんと三人で駆けつけた。

「由朗は?」

病室の前で、父が話す。

「ひとまず大丈夫。詳しい検査は明日になるそうだ。本人は今眠っているから」

眠っているなら、顔を見るのは明日以降がいいだろう。顔が見られないことで、不安な気持ちが増す。
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