捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「実は、由朗の仕事を肩代わりしているんだけど、私にはまだ荷が重いみたいで。緊張状態が続いているのか、寝つきが悪くて」
「それはいけないですね。睡眠が取れていないと、免疫が落ちます。……少し待っていてください。温かなお茶でも買ってきますので」

功輔さんが離れたタイミングで、雲の切れ間から日が差し、その光に目がくらんだ。寝不足の身体には強い刺激だったようで、一瞬周囲が暗くなる。自分が立っているのかわからない。
はっと気づくと、私の身体を抱き、支えてくれているのは功輔さんだった。

「里花さん、大丈夫ですか」
「功輔さん、ありがとう」

離れようとするものの、まだクラクラしてしまい、彼の腕を頼るようによろめいてしまう。近くのベンチに、功輔さんが連れて行ってくれる。

「里花」

その鋭い声は中庭の入り口から聞こえた。まだ揺らぐ視界の向こうに奏士さんがいる。
なんでそんな顔をしているの? もしかして今のシーンを見られた? 誤解された?

「どういうことだ、功輔」

奏士さんが歩み寄ってくる。功輔さんに食ってかからんばかりになっているので、私は必死に声をあげる。

「違うの、奏士さん。私がふらついて」
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