捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「里花さん、社長は里花さんを驚かせたくて帰国の予定を早めたんです。今日明日はお休みですから、おふたりでゆっくりお過ごしください。社長の隣ならよく眠れるのではないですか?」

少しだけいたずらっぽく言う功輔さんは、沙織さんだけでなく、奏士さんのこともすごく大事に想っているのだと気づいた。

「功輔さん、ありがとう」
「もう少ししたら、沙織と帰りますので。社長、由朗さんに会うのは明日以降にしてください。今日は里花さんの体調優先です」

功輔さんに促され、私と奏士さんはタクシーでマンションに向かった。奏士さんは空港から真っ直ぐ病院に駆けつけてくれたようで、スーツケースも持っている。

「帰国、来週だと思ってた」
「仕事の引継ぎが思ったより、早く済んだから。由朗の体調の件も聞いていたし」
「由朗は来週には退院できるの」

タクシーから下り、マンションのエントランスを抜ける。高層階用のエレベーターに乗る。私たちしかいない。

「里花は大丈夫なのか?」

尋ねられて私は苦笑いで頷いた。

「慣れないものだから、ひとりでいっぱいいっぱいになって眠れない日があって。情けないなあ」
「功輔の言葉じゃないが」

奏士さんは言葉を切った。

「俺の隣ならよく眠れると思う」
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