捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

十一月がやってきた。同棲から二ヶ月ちょっと、結婚式を明日に控えたその日、私は奏士さんと夕食の準備をしていた。
アメリカではデリばかり使っていたなんて言う奏士さんだけど、家事はそれなりにできる。今日も私の代わりにステーキ肉を焼いてくれている。私はサラダの係だ。

「里花、一枚でいいのか？」
「そんなに食べたら、お腹がポッコリ出て明日のドレスが着れないよ」
「そんなことないだろう」

そんなことあるのだ。奏士さんと暮らして二ヶ月、彼とごはんを食べる毎日で私は少々太った。一緒に暮らす人がごはんを食べてくれるというのが嬉しくて、毎日作り過ぎてしまっていたのかも。奏士さんも喜んで食べてくれるので、つい……。

「ドレスを選んだ頃から三キロくらい丸くなっちゃったの。普通はウエディングドレスを着るために痩せるはずなのに、私ったら」
「いや、里花は細すぎるくらいだったから、少しふっくらしても全然いい」

抱き心地もいいしと笑う奏士さんをぽこんと叩いておく。各自のお皿にお肉やサラダを盛り付け、完成だ。

「美味しそうね」
「しっかり食べて、元気に結婚式をしよう」

奏士さんが笑顔で言って、お皿を運んでくれる。素敵な旦那様の後を、私もカトラリーを手についていく。