捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「奏士くんの希望だろ? 姉さんのお色直し」

由朗が尋ね、奏士さんが答える前に功輔さんが答える。

「そうですね。里花さんのドレス選定のために、何度か仕事の予定を変更しましたので」
「功輔、余計なことを言わなくていい」

奏士さんが照れ隠しに渋い顔をしている。でも、本当に奏士さんの希望だったのだ。ドレスも和装も、全部見たいと言われて私は苦笑いで了承したのだから。

「社長は、里花さんに夢中だから、たくさん綺麗なところを見たかったんですよね」
「次は沙織さんと由朗だからね。期待してます」

私も恥ずかしいので矛先を変える。由朗と沙織さんもおそらくそう遠くない未来、結婚式を挙げるだろう。今日、沙織さんにブーケをプレゼントしたことは、みんな知っている。

「私たちはまだ先! それに功輔が心配で簡単にお嫁になんかいけない」
「余計なお世話だ。とっとと嫁に行ってくれ」

つつきあう双子に私たちは笑う。

「沙織、功輔、明日からしばらく頼む」
「ハネムーンくらいゆっくり行ってきてください」
「お土産期待してます」

そう、明日から一週間、私と奏士さんはハネムーンに出発するのだ。行き先は私の希望でアジア。ベトナムのリゾート地を回る予定だ。

「由朗も無理しないでね。忙しすぎると、また倒れるよ」
「姉さんに心配かけないように気を付けるよ。沙織にも見張っていてもらうから」

ねえ、と微笑み合う弟と友人を見て、私はやっぱりふたりの結婚もそう遠くない未来だといいなと思うのだった。


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