捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

二年近く経った。
俺は大学二年になり、里花は中学三年にあがった。十五歳になる年齢だ。
俺はひそかに考えていることを計画に移す時期だと思っていた。

里花と婚約をしよう。
三栖家と宮成家は、旧知の間柄。家の格だけでいえば宮成家の方が上であり、宮成家を敬うように代々一族は教育されている。しかし三栖家の財力は、明治期、宮成商事の創業を支えたのだ。協力関係にあるふたつの一族の間で婚姻が結ばれても問題はないはずだ。
兄も結婚が決まった。俺が婚約したい相手がいると言いだせば、おめでたいことが続くとあって、両親も乗り気になるのではなかろうか。

しかし、俺の思惑通りにはならなかった。ある日突然、父が言った。

「奏士、アメリカに留学する気はないか」
「アメリカ……」
「秋の新学期に合わせて編入するんだ。叔父さんが面倒を見てくれる。その後は叔父さんの元で働いてほしいと思っている」

叔父は父の弟で、三栖の海外拠点のトップだ。
なるほど、次男にはちょうどいい立場を準備してくれたというわけだ。三栖本社で働くより、伸び伸びと仕事ができ、いずれはトップの地位が約束されている。

いじけた気持ちはなかった。三栖を継ぐのは兄で、俺は兄を支える役目だと思っていたから。それが日本かアメリカかの差でしかない。
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