捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
里花は幸せを掴んだのだ。
自分自身にそう言い聞かせる。俺の可愛いお姫様は、幸せにしてくれる相手を見つけた。俺がいつまでも気にし続けてはいけない。
俺の恋はもうとっくに終わっていて、この未練も捨てるべきなのだ。里花の結婚は区切りになるはず。
後々、沙織と功輔に聞いたが、この頃の俺は荒れていたらしい。無茶なスケジュールで仕事を組み、知人のホームパーティーなどでは妙にバカ騒ぎをするので心配していたとのことだ。
俺は俺なりに里花の結婚を消化しようと必死だったのだろう。



里花に再会できたのはそれから半年後のことだった。里花の婚約の報を聞いてから一年近くが経っていた。新婚の里花は、夫とともに同じパーティーに参加していたのだ。

「里花?」

おとなしくうつむきがちにしていた彼女が声をかけると、ぱっと笑顔になった。幼い頃と同じあどけない笑顔だ。三年以上ぶりの再会だった。

「奏士さん」

呼ぶ声も変わらない。ただ俺を見て、笑顔が一瞬悲しげに歪んだ。
俺はその違和感に目を瞠った。里花の変化はわずかな時間で、すぐにあの笑顔に戻る。
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