捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
ひと月後、俺と里花はホテルのラウンジで再会した。
そして、俺の計画はスタートした。
里花を奪う。今度こそ俺のものにする。
どこにいても、何があっても、もう離さない。いっそ、里花の気持ちすらどうでもいい。
里花のいない世界なんて、俺が耐えられない。





「奏士さーん」

夕暮れ時のオフィス街、パンプスを鳴らし小走りで駆け寄ってくるのは里花だ。はつらつとして明るい様子は、子どもの頃のようだ。
俺は愛しい婚約者を両手を広げて迎える。
里花は戸惑ったように笑い、それからおずおずと俺の腕の中に納まってくれた。人の目を気にしているようだ。俺はいつでもどこでも里花に愛情表現をしたいので、里花はそんな俺の行動に困っている様子。困っている顔が可愛いので、俺もやめる気はない。
プロポーズから一日、俺は湧き上がる幸福な気持ちを抑えられないでいる。

「結納や結婚式のこと、色々決めてくれたのね。すごくスピーディー」

様々な事務連絡は、すでに里花のスマホにも、実家にも連絡済みだ。

「ああ、功輔にはがっついている、里花に引かれると注意されたよ。でも、我慢できなかった」

俺の素直な告白に、里花が「引きはしないけど……うーん」と微妙な苦笑いを見せる。俺のハグから抜け出して、手を握ってくる。
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