捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「朝食にしよう。ここは俺と彼らの仕事場で、他の部下は入ってこないから遠慮はしないでくれ」
「そもそもまだ時間外ですけどね」

功輔さんが言う。おそらく、これらの朝食を揃えてくれたのは功輔さんだろう。

「ありがとうございます。美味しそう」

応接セットに四人でかけ、食事にした。
目の前には奏士さんがいる。沙織さんと功輔さんが、どちらがレタスサンドを食べるかで言い合いをしている。私は温かなカップのカフェオレを手に包み、ほおとを息を吐いた。

「やっと表情がやわらいだ」

奏士さんが目を細めた。私は今までどんな顔をしていたのだろう。

「誰かと食事をとるのが久しぶりで、なんだか変な感じがします」
「え」
「ひとりだったので……ずっと」

自分で言って痛々しい言葉になってしまったと慌てた。
確かにずっとひとりきりで、一日中過ごしていたし、食事もちゃんとしたものは食べていなかったけれど、それを言っては引かれてしまう。

「あ、でも卵かけごはんの美味しい食べ方や、SNSのバズレシピとか試せたので、楽しかったですよ。実家では、あまりしたことがなかったので」

言い訳が余計痛々しく響いてしまった。
沈黙の流れる室内で、奏士さんが厳しい表情になり、私を見つめる。
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