捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
『妻の里花ですが……お知り合いだったようで』
『はい、里花さんとは幼馴染なんですよ。宮成家と三栖家は旧知ですし、兄妹のような関係です』

そう言ってから奏士さんは私を見つめる。

『里花、合わないでいるうちにいっそう綺麗になったね。俺が知っている里花はまだ蕾だったのに、今は大輪のひまわりみたいだ』

そこでバラや百合と言わずにひまわりをあげてくる奏士さんに、私はくすっと笑った。きっと彼にとって私はまだ、麗しく美麗というより、明るく無邪気な存在なのだろう。

『来月に三栖主催のちょっとしたパーティーがあります。郷地ご夫妻にも招待状をお届けしますのでぜひお越しください。またゆっくりお話しましょう』

そう言って奏士さんは去っていった。彼が去った後、京太が横で舌打ちをした。

『好き勝手できる自由なボンボンはいい気なもんだ』
『奏士さんはそんな人ではありません』

反射的に言ってしまった。好き勝手だなんて、この男にだけは言われたくない。
奏士さんは次男であるがゆえに、三栖グループでの自身のポジション確立のため渡米したのだ。

『口答えか?』

京太が私の腕を振り払った。それは周囲には気づかれないほどの小さな仕草だったけれど、された方にはしっかりと悪意が伝わる。

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