捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで

夕刻、物音で目覚める。随分長く眠ってしまっていたようだ。
リビングに出て行くとそこに京太がいた。

「寝ていたのか。昼日中からいい身分だな」
「すみません」

私は謝る。昨日出て行けと言われたばかりで家にいていいものか。なんと言おうか迷っていると、京太が口を開いた。

「昨晩は？」
「ビジネスホテルに」

咄嗟に嘘をついた。よくないと思ったが、友人などといえば何を勘ぐられるかわからない。少しでも奏士さんを想起させるようなことは避けたい。

「出て行けと言ったが、今おまえに実家に戻られても困るからな。ここにいていい。うちの両親もうるさいし……」
「はい」
「好きなように過ごせ。どうせ離婚はできないんだ」

夫なりに寛容な態度を取っているようだ。それが傲慢であっても。
私は頷き、キッチンへ入った。

「お茶を淹れます」
「俺はいらない。すぐに行くからな。今夜も戻らない」

そう言って、京太は私に背を向け自室へ入っていった。私は自分の分だけお茶を淹れ、自室へ。それから間もなく玄関のドアの開閉音が聞こえた。京太が出ていったのだろう。