捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
今日は別な女性の家へ行くのだろう。一番親しい様子の摩耶という女性だろうか。

昨晩はユミというお気に入りの愛人と別れたと大騒ぎだった。帰ってくるなり『おまえなんかと結婚したからユミとこじれたんだ』と怒鳴り散らされた。
夫の顔を見ること自体一週間ぶりで、さらにいきなりものすごい剣幕で身に覚えのないことで怒られ、私はわけもわからず黙ってそれを聞いていた。
私という本妻を迎えてから、そのユミという女性とはうまくいかなくなっていたそうだ。だからといって、私が直接何かしたわけではないし、結婚を選んだのは京太だ。
そもそも私は京太の愛人を全員把握していない。会社に数人、馴染みのホステスが数人、キャバ嬢が数人……。

私に責任はない。彼も結局両親に何かを言われるのが怖くて、『出て行け』を撤回した。これは予想していたことでもあった。

「離婚できない、かあ」

私は京太に言われた言葉を反芻する。
京太は私とは離婚しない。それは義両親の言いつけだからだ。
元華族がなんだというのだろう。私にはその価値がよくわからない。普通に生きていくのに必要なのだろうか。

京太は親に絶対に逆らわない。甘やかされて育っているのは傍目に見てもわかるけれど、両親に対しては恐れがあるのか、はたまた経済的な部分を握られているのか絶対服従なのだ。
義両親は、私が離婚を申し立てれば、私の我儘だと宮成家ごと悪く言いかねない人たちだ。
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