捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
パーティーは歓談の場になり、京太はあちこち挨拶周りを始めた。最初はわかりやすく気おくれしていたものの、ビジネスチャンスだと思ったようだ。私に「あの男は誰だ」「顔見知りなら繋げ」「弟に紹介させろ」などなど傲慢なことを繰り返し言う。
本来ならそんな都合のいい願いは聞きたくないけれど、妻として夫の商機を蔑ろにすることもできない。
あとは、普段より人間扱いされていることにほっとした。いつもほぼ無視の夫が、この場は上流階級にツテのある私を頼らざるを得ないのだ。
しかし、京太は一向に三栖家の本陣には赴こうとはしない。堂々と挨拶にいけばいいのに、と思っていたら、私は私で会場の隅に控えている女性と目があった。
沙織さんだ。その横には功輔さんもいる。奏士さんの部下として出席しているに違いない。
すると、何を思ったのか沙織さんがずんずん大股で近寄ってくる。
「失礼します。奥様、顔色が優れないご様子ですが」
私はたじろいだ。確かにあちらこちらと振り回され、顔つなぎをさせられ、疲れてはいる。
「よろしければ、ソファのあるお部屋にご案内いたします。少々お休みになられてはいかがでしょう」
沙織さんの言いたいことがわかった。私は迷ってから、頷いた。
「すみません、あなた。実は朝から少し貧血気味で」
京太に妻らしく言う。対外的に愛妻家を気取っている京太が言うことを聞かざるを得ないように。
「……そうか。じゃあ、きみ、妻を頼むよ」
舌打ちでもせんばかりに顔を歪めたあと、京太は愛想よく言った。
本来ならそんな都合のいい願いは聞きたくないけれど、妻として夫の商機を蔑ろにすることもできない。
あとは、普段より人間扱いされていることにほっとした。いつもほぼ無視の夫が、この場は上流階級にツテのある私を頼らざるを得ないのだ。
しかし、京太は一向に三栖家の本陣には赴こうとはしない。堂々と挨拶にいけばいいのに、と思っていたら、私は私で会場の隅に控えている女性と目があった。
沙織さんだ。その横には功輔さんもいる。奏士さんの部下として出席しているに違いない。
すると、何を思ったのか沙織さんがずんずん大股で近寄ってくる。
「失礼します。奥様、顔色が優れないご様子ですが」
私はたじろいだ。確かにあちらこちらと振り回され、顔つなぎをさせられ、疲れてはいる。
「よろしければ、ソファのあるお部屋にご案内いたします。少々お休みになられてはいかがでしょう」
沙織さんの言いたいことがわかった。私は迷ってから、頷いた。
「すみません、あなた。実は朝から少し貧血気味で」
京太に妻らしく言う。対外的に愛妻家を気取っている京太が言うことを聞かざるを得ないように。
「……そうか。じゃあ、きみ、妻を頼むよ」
舌打ちでもせんばかりに顔を歪めたあと、京太は愛想よく言った。