捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
そして、奏士さん。彼もまた、私のために多くのことをしようとするだろう。
私を奪うと、好きだと言ってくれた奏士さん。
本当は今すぐこの家を出て、彼のもとへ走っていきたい。だけどできない。

私はまだこの結婚をやめられない。離婚を選び、周囲を巻き込み大騒動になるより、ここで静かに夫の改心を祈りたい。

だけど、こんな情けない自分は嫌い。
プライドもない。活力もない。
こんな私は大嫌い。



義両親から呼び出しがあったのは、京太からの連絡の翌日だった。なんの用事だろう。義両親とは京太の愛人が発覚したとき以来会っていない。

「ご無沙汰しています」

広々としたリビングで向かい合った。義父はしかつめらしい顔をし、義母も冷たい表情だ。義父が口を開く。

「里花さん、京太とはうまくやっているのか?」

何を言っているのだろう。私は怒りとも虚しさともつかな感情を押し殺し、答えた。

「京太さんは家に戻られませんので、週に一・二度しか顔を合わせません。好きな女性の御宅にいるようです」
「里花さん、あなたもう少し頑張らなきゃ駄目じゃない」

義母が苛々と言う。

「あなたがしっかりと京太を惹きつけておかないから、あんな女が」

あんな女……それは京太の愛人の誰かのことだろうか。義父が続けた。

「里花さん、京太の部下の摩耶という女性を知っているか。彼女が妊娠してね」

妊娠……さすがに驚いて言葉がでてこない。別れを祈るなんていうレベルなんてものではないことが起こっていたようだ。
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