捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
あの摩耶という女性が妊娠。……だから京太は帰らないのだ。
決定的な出来事に思えた。やはり、私と京太に未来はない。一度は愛そうと決めた男性はやはり私と歩いていける人ではないのだ。

ここまでコケにされ、存在を無視されるのは寂しい。
私は郷地の後継者を作るためだけの機械なのだろうか。それなら……。

自暴自棄になったわけではない。だけど、この家から解放されるには子どもを産むしかないのかもしれないと考え始めていた。

たった一度、京太に願ってみよう。
子どもを作ろう、と。親の願いを果たそう、と。
彼が応じれば、嫌でもなんでも抱き合ってみせる。子ができれば、この閉鎖的な状況が何か変わるかもしれない。

案外、義両親はあっさり離婚を許すかもしれない。子どもは置いていけと言われるだろうけれど。
離婚を許されなくても、産んだ子は私の子だ。郷地の家でただひとり私の家族ができる。ひとりぼっちじゃなくなる。京太も義両親も私を無視しても、子どもだけは私といてくれる。
私は思い切ってスマホで京太に連絡を入れた。

『今夜、お話できませんか?』

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