捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
しかし、京太は吐き捨てるように言った。

「くだらない。俺に相手にしてもらえないからと自棄になっているのか」
「京太さんがご両親の言いつけ通りにするなら、私も従うというだけです」

一歩進み出た。彼を見上げ、必死に言葉を重ねた。

「私は京太さんと家族になろうと思って嫁ぎました。私との子どもを考えることはできませんか」

すると、京太が私の肩をどんと突いた。私はよろけて、背後のソファにぶつかる。

「馬鹿か、おまえは。俺はおまえのことが大嫌いなんだよ。おまえら一家、全員が俺を馬鹿にしてるだろ。郷地家を下に見てる。上流階級に憧れる庶民を見下して楽しいか?」

私はかぶりを振った。とんでもない被害妄想だ。そんなことを考えたこともない。

「里花、おまえの分別くさい顔が気に食わない。自分は思慮深いと言わんばかりのな。男の経験がないくせに誘うようなことをして、恥ずかしい女だな」
「それなら……なぜ、私と……結婚したんですか?」
「親父たちに言われたからだよ! そうでなければ、おまえみたいないけすかない女……。子どもはいずれ考える。おまえの方からうるさく言うな!」

ああ、勇気を出したのに。頑張ったつもりだったのに。全部駄目だ。
涙が滲んできた。
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