捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「離婚しましょう、京太さん」

溢れる涙のままに私は言った。京太が馬鹿にしたようにせせら笑う。

「何度も言わせるな。そんなのはうちの親が許さないんだよ」
「そんなにお義父さんとお義母さんが怖いなら、摩耶さんでも誰でも好きな女性を連れて逃げればいいじゃないですか」

私の怒りの言葉に、京太が表情を変えた。ぎろっと睨みつけてくる。構わず私は叫んだ。

「それをしないのはご両親の庇護を離れて生活していく自信がないからでしょう。贅沢に甘やかされて育ったあなたは、ご両親に金銭的に頼れる場所にいたいだけなんだわ。本来は摩耶さんと子どもに責任を取るべきよ!」

次の瞬間、京太が私を突き飛ばした。小柄な私は勢い床に尻餅をついた。
京太は乱暴な態度を取ってしまったことに、はっとした顔をし、それから慌てて顔をそむけた。

「……忌々しい女だ。知った口を聞くな。なんの苦労もしていないくせに」
「あなたはさぞ御苦労の多い毎日なんでしょう」

私は立ち上がった。もう駄目だ。ここにはいられない。
手元にあった鞄だけを手に家を飛び出した。

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