捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
私は今日の出来事を、順を追って話した。
義両親に呼び出されたこと、夫の愛人の妊娠、夫に拒絶されたこと。

「考えてみれば、自分の孤独を癒すため、子どもを産もうと一瞬でも考えた私が愚かでした」

自分で言って涙が出てきた。こんなのは努力でもなんでもない。足掻きだ。もし、これで子どもを授かったらその子を不幸にしてしまっただろう。

「里花……、そこまでの状況でどうして耐えているんだ」
「私が郷地の嫁でいれば、誰にも迷惑はかかりません」
「ご両親を心配させたくないからか? それとも、離婚したら由朗の居場所を奪うと思っているのか?」

ぎくりと私はかたまった。やはり、そのことまで奏士さんは察している。
私が宮成家にもどれば、宮成商事の地盤が、由朗の立場が揺らぐかもしれないということ。

「私が我慢すれば」
「里花、おまえの自己犠牲は的外れだ」

私の言葉を遮って、奏士さんが厳しい口調で言いきった。

「可愛い娘が嫁ぎ先で蔑ろにされていると知ったら、ご両親は怒り狂う。それは親として当然の権利だ。里花が取り上げていいものじゃない。そして由朗は、里花が思うよりずっとしっかりしている。心配しなくても、宮成商事の跡取りは由朗だ」

私の懸念材料を払拭する言葉を並べ、奏士さんは黒い瞳で真摯に私を見つめてくる。
< 60 / 193 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop