捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「里花、おまえが悲劇のヒロインでいても誰も得しないんだ。むしろ、おまえを大事に想う多くの人を傷つける」

その言葉にはっと私は彼を見つめ返した。

「私は……」

よかれと思ってこの状況に甘んじていた。だけど、それ自体が間違いだった?
私が我慢すれば、家族が傷つく?

「奏士さん、ごめんなさい。私、離婚したい……離婚したいです」

涙が溢れた。
馬鹿だった。私はこの結婚を解消するため努力すべきだったのだ。それをひとりよがりに我慢して、自分を押し込めていた。

「ああ、もうやめよう。こんなことで心をすり減らすな。これからは俺が里花を守るから」

奏士さんが私の両手を大きな手で包む。そこには深い愛情が感じられた。

「宮成の家に帰ろう。俺が送る」

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