捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「そして、おじさんとおばさん、由朗にお願いがあります」

奏士さんが私の手に大きな手を添えた。私が止める間もなく、奏士さんは言い放った。

「里花を大事に想っています。昔からです。離婚が成立したら、正式に交際を申し込もうと思っています」

まさか、この場で言うとは思わなかった。驚きと焦りで、頬がかーっと熱くなるのを感じる。
奏士さんの強い感情は感じていた。これはただの幼馴染の感情は超えている。両親の前で結婚を請うだなんて。

「奏士くん、そんな……いくら子どもの頃からの仲だからって、きみにそこまで迷惑をかけるわけには」

怒っていた父も一転面食らって言葉がしどろもどろになってしまう。私の離婚だけで大変な話なのに、奏士さんが私を娶る発言をしてしまうのだから当然だろう。

「迷惑ではありませんし、同情でもありません。子どもの頃から里花を大事に想ってきました。俺は日本にほとんどいられないので、婚約を諦めましたが、今でも気持ちは変わっていません」

堂々と宣言する奏士さんは、おそらく本気なのだ。
でもいいの? これは一時の激情ではないの? 不安でどんな顔をすればいいのかわからない。

「里花はどうなんだ」

父に訊ねられ、狼狽した私は答える。

「あの、まだ奏士さんとはそういった仲ではないから」
「里花さんの離婚が成立するまでは、不貞行為にあたることはしません」

奏士さんが言うけれど、両親はまだ戸惑った顔をしている。
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