捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
4.歩み出す決意
翌朝の目覚めはとても快調だった。久しぶりの感覚だ。深い睡眠をとったせいか思考がはっきりしている気がする。
身体を起こすと見慣れた自室に、帰ってきたことを実感し、何よりほっとした。
「姉さん起きてる?」
ドアの外で呼んでいるのは由朗だ。私はベッドの中で返事をする。
「起きたところ」
「朝ごはんの準備、できてるよ。ゆっくりでいいから降りてきなよ」
由朗に促され、二階の洗面所で顔を洗い、パジャマのまま一階へ降りた。
「おはよう、里花」
「目玉焼きでよかった?」
両親がいる。由朗がいる。温かな食事の並ぶ、朝食の席。初夏の朝の爽やかな空気。
その光景だけで無性に泣けてきてしまった。今までの心細さや不安感がほどけて、立っていられない。その場でしゃくりあげる私を由朗が席に連れて行ってくれる。
「姉さん、ずっとあのマンションにひとりでいたんだね」
そうだ。食事はいつもひとりだった。作っても無視される食事はいつしか作らなくなったし、京太もほとんど帰らなくなった。
この世から忘れ去られたような、ひとりぼっちの数ヶ月だった。