捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「沙織さん、お仕事があるのに、厄介事をお願いしてしまいすみません」
「ああ、いえいえ。私と功輔は、父のコネで三栖グループに入れてもらえ、さらには奏士さんの元で多くの経験をさせてもらっています。このくらいじゃ、社長へのご恩返しに入りませんよ」
「アメリカにいる頃からですよね」
「ええ、私と功輔はあちらの大学を出てそのまま。社長の手腕はすごいですよ。向こうは企業のトップに若者も多いですけど、社長はそういった環境が合ったみたいですね。日本にいるより、よかったとご自分でも言っていました」

奏士さんは自分が次男だから、外側から三栖グループを支える道を選んだのだ。そして、今、三栖の一翼を担うために日本に戻ってきた。本当にすごい人なのだと今更思う。

「ちなみにアメリカではとんでもなくモテてました。だけど、ほとんど見向きもしなかったんじゃないかなあ。……それって、里花さんの存在があったからなんですね」

どきんとした。奏士さんほど素敵な男性を、女性たちが放っておくわけはないと思っていたけれど。

「社長のお気持ち、信じてあげてくださいね」

沙織さんの言葉に照れくさくてうつむく。すると、私の横に椅子を運んできたのは由朗だ。

「俺も参加していい? 美味しそうなタルトだなあ」
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