捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
次の瞬間、京太が私のハンドバッグを取り上げ、バスルームに投げ込んだ。がこんという音から浴槽に水が入っていないことはわかった。単純に私から連絡手段を遠ざけただけだ。
慌てて取りに行こうとすると、京太の腕が私を捉えた。
小柄な私は軽々持ち上げられ、ベッドに放り投げられる。スプリングで弾む間もなく、京太が圧し掛かってきた。

「京太さん! 何をするんですか!?」

叫ぶ私は京太の身体の圧迫で、それ以上言葉を発することができなくなった。腹と胸を押され、息すらろくにできず喘ぐ。京太が憎々しげに見下ろしている。

「諦めろ」
「……な……にを」
「おまえはここで俺と子どもを作るんだ。妊娠するまで、ここから逃がさないからな」

ぞっと背筋が凍った。騙されていたのだ。最初からこれが目的で呼びだしたのだ。離婚の話し合いに応じるふりをして……。

「やめ……やめて……ください!」

精一杯声を出すけれど、圧迫され大きな声が出ない。必死に手足を振り回し抵抗しても、非力な私は簡単に抑え込まれてしまう。

「あの男……三栖奏士はおまえが俺と寝てないことに価値を置いているだろう。俺に抱かれて子を孕んだと知ったらどうなるかな。おまえを離婚させるなんて言わなくなるんじゃないか?」
「奏士……さんは……関係ありません……私があなたと……もうやっていけないだけ」
「おまえは俺の子を産むしかないんだよ!」
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