捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
「どういうこと……?」

私は立ち上がり、奏士さんに支えられながら京太に歩み寄る。
お腹の子? 摩耶さんは京太が私を軟禁するのを知っていた?
京太がうつむき、かすれた声で告白する。

「宮成家から里花との離婚の話が出て、うちの親が態度を変えた。摩耶を職場から解雇して、俺と里花の結婚生活を壊したことについて損害賠償を請求するって。お腹の子も堕ろせ、と」
「ひどい……そんなの……」

京太の愛人を容認しながら結婚させたのはあの人たちだ。摩耶さんの妊娠だって、渋々ではあるけれど認めていたはずなのに。摩耶さんひとりを悪者にするつもりなのだ。

「損害賠償請求を撤回し、お腹の子を許してほしいなら、里花との間にすぐに子どもを作れ。離婚を阻止しろ。そういうふうに言われて……」

そのときを思いだしているのか京太は屈辱の表情をし、拳を握る。それから言った。

「だけど、俺が馬鹿だった。こんなこと異常だ。犯罪だ。すまない、里花。すまない、摩耶」

実の息子すら、命令で縛り操ろうとするなんて、それはもう同じ人ですらないのかもしれない。膨れ上がった欲望の塊だ。
京太にたった今されたことを容認はできないし、境遇を同情してやることもできない。だけど、言うべきだと思ったから私は口にした。

「京太さん、ご両親から離れた方がいい」

私は震える声で続けた。

「大変かもしれないけど、摩耶さんとお腹の赤ちゃんと生きていく道を探った方がいいと思います」
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