捨てられ妻の私がエリート御曹司に甘く娶られるまで
京太との離婚が成立したのは翌週のことだった。
弁護士同士が話し合い、双方合意のもと、離婚届を記入した。決まればとても早く、スムーズだった。
京太は両親には一切報告せずに離婚届を記入したという。それは京太の決別を意味しているのだろう。
義両親からはうちの両親の下へ直接抗議の連絡がきたけれど、当人同士が弁護士を通して話し合った後のこと。彼らが口を挟む余地はなかった。そして、義両親は近く知ることになる。郷地物産が大きな取引先を失う事実を。

ともかく、受け取った離婚届を私が区役所に提出しに行き、八ヶ月の結婚生活は幕を閉じた。


その週の土曜、私はお台場の公園で沙織さんと散歩をしていた。
暑い夏の海辺。風は気持ちいいけれど、とにかく日差しが強い。私も沙織さんもつばひろの帽子をかぶり、日焼け止めもばっちり。手にはすぐ近くの売店で買ったソフトクリーム。

「慰謝料も、財産分与も無しで本当によかったんですかぁ?」

沙織さんが私の隣でソフトクリームを食べながら尋ねる。私は自分のソフトクリームを手に、苦笑いする。

「ふふ、沙織さんのお父様にも怒られちゃった」

私は金銭的にはほとんどの請求をしなかった。引越し費用と、門司弁護士の費用を京太に払ってもらっただけで、離婚届けに判を押した。それで充分だった。
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